2006年の末に倉庫を新築したいとの事で連絡を受けた。早速に現地を訪れ概要を聞いた。家業は元々は造り酒屋であり、主屋に隣接する酒蔵で昭和の初期まで醸造していたという。その酒蔵を解体し、小さな倉庫を建築するので設計をお願いしたいとの事であった。
案内された酒蔵は所々に傷みは見られるものの構造体の健全さは直感的に感ずることができた。土蔵の中に更に小さな室蔵が残り、魅力的な空間であった。酒蔵の再生をすすめた。酒蔵の規模は大きく、全体の修復は困難を極めることから、道路側半分を修復保存して倉庫として利用し、残り半分を解体することを提案した。そのような工事が現実に可能なのか、S氏は少々疑問に又、心配された様子であった。
同規模の倉庫を新築する場合の工事費と比較して同額又はそれ以下であればという条件で酒蔵を再生することとなり、双方の建築費の比較検討をおこない、建築条件を満たしたことで着工している。
工事途中に、次期工事として酒蔵に隣接する主屋の新築の計画があることを告げられる。家業であった造り酒屋の歴史を引き継ぐため、解体中の酒蔵の梁を新築する主屋の玄関に取り入れることにした又、現在の主屋に使用されている襖及び欄間も新築する住まいに再使用したいとの事から新築する座敷の柱間寸法は、既存の建具(襖)寸法より決定している。すべての部材が新しい新築と異なり、旧家屋の部材を再使用することで、家の歴史を紡ぐ豊かな時空間を創り出している。





化粧梁は酒蔵の梁を再使用している






